2012年12月26日水曜日

「原子力安全閣僚会議」16万人避難者の存在は隠蔽?

以下、日経記事です。中に仰天するような記述がありました。先ごろ郡山で開かれた原子力安全閣僚会議に130国の閣僚が参加しましたが、米原子力規制委員会(NRC)のアリソン・マクファーレンの記者会見で“16万人の避難者”の存在がまったく伝えられていなかったことがあきらかになりました。

その存在についてマクファーレンは<はじめて知った>と返答。
米国NRC委員長レベルに伝わっていないということは、他の参加者にも伏せられていたのでしょう。こんなことで原子力災害の収束を名目とした発展、また、復興の機会にしようとするのですから
--------身も凍る思いです。

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■福島に来た世界の閣僚が訪れなかった場所 日経 23/12/2012

 国際原子力機関(IAEA)は来年にも福島県内に原子力発電所の事故に対応する拠点を設ける。IAEAが、本部のあるオーストリア・ウィーン以外で拠点を設けるのは初めて。原発事故が起きた時にどんな対策が必要になるかを学ぶ訓練施設にもなる。福島の教訓を生かすため、世界の英知が結集することになる。

 IAEAが福島県内に設けるのは、緊急時対応ネットワーク(RANET)の能力研修センター(CBC)。原発事故が起きた時に使う放射線計測器や防護服などを配備するほか、日本語が堪能なIAEAの調整官が1人常駐する。原発事故が起きた場合、現場に急行して原発周辺の放射線量を測定したり住民を避難誘導したりするノウハウを学ぶ。

 IAEAの研修センターが設けられるのは世界で初めて。外務省国際原子力協力室の担当者は「経費削減の要求が厳しい国際機関が海外に拠点を設けるのは異例だ。福島県から強い要望を受けて実現した」と説明する。今年8月には佐藤雄平・福島県知事がウィーンのIAEA本部を訪ね、天野之弥IAEA事務局長と面会し、福島県内に進出するよう要望していた。

 福島県がIAEAに拠点設置を要望したのは復興で力を借りるため。除染や放射線モニタリング、放射線による健康管理などは高度な知識が欠かせない。福島県だけで賄うことは不可能で、国際的な知見を得るのが狙い。世界から訪れる研究者らが増えれば、県内経済の回復を後押しする効果も期待できる。放射線に詳しい専門家に地域の現状を知ってもらい世界に正確な情報を発信してもらえれば、風評被害の払拭(ふっしょく)にもつながる。
 研修センターは当面、福島県庁の隣にある自治会館に設ける。東日本大震災の直後には、倒壊の危険性が指摘された本庁舎に代わって、災害対策本部やオフサイトセンターが置かれたほか、臨時の記者クラブも入っていた場所だ。来年にも会館内の一室を借りてセンターを立ち上げる。ただ、これは仮の事務所で、2015年度にも福島県が三春町に建設する「福島県環境創造センター」(仮称)に拠点を移す方向だ。環境創造センターは日本原子力研究開発機構や国立環境研究所なども拠点を設ける見通し。国内外の研究者が集い、除染や廃炉、健康管理などを担う世界的な拠点になる。

 しかし、県民にはIAEAとの協力に否定的な意見も少なくない。IAEAはあくまでも原発を推進する側の国際機関であり、原発事故からの復興を願う福島県との方向性は必ずしも一致しないからだ。福島県の荒竹宏之生活環境部長は「県民に(IAEAとの協力を)押しつけてしまえば、反発を受けることはこれまでの経験から分かっている」と話す。佐藤知事も「福島県は県内にある全10基の原発の廃炉を求めている。IAEAとの協力は除染とモニタリング、健康調査の3分野に限られる」と原発推進の立場からの協力は受けないと強調した。

 福島県とIAEAとの協力に関する覚書の署名式は、12月15日に福島県郡山市で政府などが開いた「原子力安全に関する福島閣僚会議」の会場で行われた。同会議は東京電力福島第1原発の廃炉に向けた取り組みの現状や除染などの活動を世界に向けて発信するのが狙い。専門家向けの視察もスケジュールに組み込まれた。関係者は福島第1原発や福島市で汚染土を一時保管する仮置き場などを見て回り、原発事故からの復興に向けた取り組みも紹介された。
 ただ、原発事故がもたらす災禍がリアリティーをもって世界に十分に伝わったかどうかについては、やや心もとない。記者会見を開いた米原子力規制委員会(NRC)のアリソン・マクファーレン委員長に、福島県内では原発事故で16万人がいまだに避難生活を続けていることに対する感想を聞いた。委員長は「初めて知った。避難された方々にはお悔やみを申し上げる」と語った。
 会場内には福島の復興に向けた取り組みを伝える写真やパネルが張られ、英語で説明が書かれていたが、避難民の生活や賠償の状況に関する解説を目にすることはなかった。会場となった郡山市のビッグパレットふくしまの隣には原発事故で避難を強いられた川内村と富岡町の仮設住宅が並んでいる。会場からわずか5分程度の距離にあり、簡単に見学もできただろう。遠方から福島県を訪れる貴重な機会だけに、立ち寄ってもらっても良かったのではないか。
 会議では原発の推進に向けて、透明性が欠かせないと繰り返し強調されていた。しかし、会場内にこもって会議を続けるだけでは、福島第1原発事故で失った原発への信頼を回復するのは難しいだろう。

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