2014年1月30日木曜日

トモダチ作戦・レーガン乗組員・米国議会で被ばく調査・決して被ばくを「ナショナル」な枠でだけで考えないように

いくらくりかえしてもしきれないことですが、被ばくを考える上で、決してナショナルな枠の中でだけ考えないこと。以下、米軍でいよいよ本格的な被ばく調査がはじまるらしい。

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2014年1月15日00時23分 朝日

 東京電力福島第一原発事故を巡り、東日本大震災で米軍の救援活動「トモダチ作戦」に参加した米空母「ロナルド・レーガン」の乗組員への健康状態を調査するよう、米議会が国防総省に義務づけることがわかった。

 米上下院がまとめた2014会計年度の歳出法案の中に盛り込まれており、議会は週内の可決を目指している。法案によると、任務に就いた後に健康状態が悪化したすべての事例を調べ、4月中旬までに議会に報告するよう求めている。また、被曝(ひばく)対策として米軍が取ったすべての措置を報告することも求める。
 同空母は震災当時、東北地方沿岸の海域で、米軍による被災者の捜索・救助活動や救援物資の輸送の拠点として活動していた。
 米国では、当時の乗組員が被曝で健康状態が悪化したとして、東京電力を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしており、原告の数は数十人に増えている。

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調べてみると、この法案の提案者は、国防省の軍医ジョナサン・ウッドソンJonathan Woodson 。9.11で危機管理医療を担当し、頭角をあらわした人物のよう。

一方、ロナルド・レーガンを統括する海軍は、トモダチ作戦に従事した乗組員たちの被ばくを認めることに関して消極的。Navy timesという海軍広報誌では「
クロスカントリーをしたときに浴びる自然放射線程度」としている。


ともあれ米国・国防総省、上下院でも兵士の被爆状態を調査しなくてはならない事態、であるというのに日本のこの、呑気さはなんだろう。ただし、この調査自体、両義性を含んだものとしてとらえておく必要がある。

というのも、広島の原爆投下から約一か月後、米軍は広島を早々に調査し、「爆発」以降も放射能障害に苦しんでいる人々の姿をまのあたりにしたのにもかかわらず、大々的に「残留放射能は存在しない」と発表したという経緯がある。

目的は、広島・長崎への軍の駐留を可能にするため。もうひとつは、原爆の非人道性が国際法違反として訴追されることをさけるため。

ナチスドイツの残虐性に抗する目的で使用された原子爆弾が、1か月をすぎてもなお放射能によって人々を苦しめていることをなんとしても隠ぺいする必要があり、瞬間的な、熱風・熱線による破壊力のみが強調され、残留放射能(爆発から1分以上たって放出された放射能を指す)は、まったく存在しないことにされた。

ちなみに米国は1943年から「放射能毒性小委員会」を組織し、その危険性、人体への影響については十分熟知していた。「にもかかわらず」...である。

こうした「被ばく」と「軍事」の歴史を踏まえると、福島第一原発によって被ばくしたレーガンの乗組員についても、「調査はしました。でも結果、被ばくは影響がない程度」 という論証材料にされかねない側面もある。

米軍にとっては、いまや災害支援は、プレゼンス誇示のため、戦争以上に重点をおかれた戦略(Operation other than WAR)。3.11の極東での大々的な展開に、負の側面を残したくないという意図もうかがえなくもない。また今後の米軍の展開にとって、兵士の士気をさげるような恐怖はとりのぞきたいという側面も。

.そのあおりで、日本社会の「被ばく」が、これ以上に過小評価されてはたまらない。

*ちなみに、いち早く単独で広島に到着したオーストラリアのジャーナリスト、ウィルフレッド・バーチェットは「広島では都市を破壊し、世界を驚かせた30日後も、人々はかの惨禍によって怪我をうけていない人でも、<原爆病>としかいいようのない未知の理由によって、いまだに不可解かつ、悲惨にも亡くなり続けている」という記事を打電し、その様子は世界を震撼させたもののその後米軍によって「デマ」扱いされ失脚の憂目にあう。

参考:隠蔽されたヒロシマ 
「いかにして陸軍省のタイムズ記者はピューリッツア賞を受賞したか」
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2004/09/by.html

2014年1月27日月曜日

東京ガールズコレクション 4月に福島県で開催。

3号機の謎の地下の温水はひょっとすると、チャイナ・シンドローム?の可能性もささやかれているのに。なさけないも通り越して、ただ、ただ怖い。こういうものを批判すると、即 郡山の線量×滞在時間から、被ばく線量をはじいてみせて「安全だっ!」という一群のひとたちがいる。だけど問題はそれ「だけ」にあるわけじゃない。もっともっと深く、この社会が煮こごらせてきた、何層ものよどみのようなものにある。

もう、何度もくりかえしてきたけど。そとで遊べないこども、家に生涯もどらないひとたち、こどもを抱えて背中を蹴られるように脱出したおかあさんたち、安心して子供を産みたいからと単身でも批判する若い女の子、今も移住の選択にゆれる人たち、なにより59名もの甲状腺がんの子ども。そのぜんぶを覆い隠すかのように、こういう復興利益まるだし、みたいのは、ひどい。

もうひとつ、「若い女の人たち」を使うというのもむごいよ。痛すぎる。

おもえば2012年、まだ食品の暫定基準が「緊急事態」として500ベクレルにひきあげられているさなかに、農林水産省は、ミス・キャンパスを使って、東北や福島の食品の「食べて応援」キャンペーンをしていた。娘子軍か?人さらい?山椒大夫の時代じゃあるまいに。


東京ガールズコレクション...服飾関係やら、売り子さんやら、モデルさん未満のような女の子たちの
割としきいの低い、かんじのイベント。そういえば、近所の子もでてるような。だからなおさら腹立たしい。若い女の子の、つつましい夢は,それだけでほほえましいし。罪はない。なのに.....こうやって先取りしていく、いやな力。


企画をもちかけたのは、東京のイベント会社。たぶんおんなじような仕組みなんだろうな。
スペクタクル社会という批判もびっくりなほど。過剰適応すぎる。
行政にうまくつけいる広告業やマーケティング業やイベント会社。たぶん原発事故よりずっーと前から、うかれた社会で煮こごってきた、はりぼて利権構造。そういうものも含めて、うんざりなのに。

それにくわえてまだ「東京」のに、求心力があるとおもっている、痛さ。
その錯誤っぷり、不遜ぶり。

そういう意味で、東京も福島も、もろともの断末魔。

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福島民友 2014年1月25日
郡山で華競演 4月に東京ガールズコレクション 本県復興を後押し


http://www.minyu-net.com/news/news/0125/news11.html
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国内最大級のファッションイベント「東京ガールズコレクション」が4月に郡山市で開かれる見通しとなったことが24日、分かった。復興支援の一環として検討されており、実現すれば東北・北海道地方では初開催。県内のほか、首都圏など県外からも多くの若者が集まることが予想され、本県の現状を若い世代から国内外に発信し、根強く残る風評被害を払拭(ふっしょく)する意味でも絶好の機会になりそうだ。 
 同コレクションは2005(平成17)年から首都圏を中心に開かれている。沖縄や名古屋、大阪、宮崎など地方都市でも行われ、女性向けファッション雑誌で活躍する日本のトップモデルが多数出演するほか、タレントや人気アーティストも参加し、最新のファッションショーやライブを繰り広げる一大イベント。
 関係者によると、本県開催は県と同市が主催団体とともに最終調整を進めており、2月中旬ごろにも正式決定する見込みという。「東京ガールズコレクションin福島2014」と銘打ち、同市のビッグパレットふくしまを会場に4月29日に開催する方向で調整している。会場にステージを組み、ファッションショーやアーティストのライブなどが披露されるとみられる。
(2014年1月25日 福島民友ニュース)

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福島民報 2014年1月25日 

トップモデルが郡山市に集結-。国内最大規模のファッションイベント「東京ガールズコレクション」が4月29日、郡山市のビッグパレットふくしまで催される。東北・北海道では初めての開催。若い女性に人気のイベントが、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの本県の復興を応援する。関連イベントを含め1万人余りの来場が見込まれる。関係者は「復興へ歩む福島の姿を全国に発信する絶好の機会」と期待している。
 ガールズコレクションは、最先端のファッションと華やかな演出が魅力で、全国から多くのファンが詰め掛ける。これまで、モデルの山田優さんや香里奈さん、土屋アンナさんをはじめ、歌手の安室奈美恵さんらがステージに立った。
 実行委員会によると、郡山市でのイベントの出演者や参加ブランドは調整中だが、トップモデルや有名女優らのファッションショー、アーティストのライブなどを計画。いわき市出身の高校生モデル松井愛莉(あいり)さん(17)の出演も検討しているという。
 若い女性が対象となる集客力のあるコレクションが開かれることは、原発事故からの復興に向け歩みを進める本県の大きな後押しとなる。放射線への不安を抱く若い世代に安全・安心な本県をアピールし、風評を払拭(ふっしょく)する。
 二歳の子どもを持つ郡山市の主婦中根裕美さん(29)は「有名なファッションショーを開催できること自体が復興の表れ。県外から多くの人が集まることで、避難している人が戻るきっかけになるのでは」と歓迎した。
 県と郡山市はイベント当日の職員派遣などで協力する。市の国分義之まちづくり政策課長(52)は「福島県、郡山市が原発事故に負けずに元気でいる姿を全国の人に見てほしい」と意気込む。各種大会やイベントの誘致活動に取り組む郡山コンベンションビューローの橋本正一事務局長(61)は「宿泊や飲食、観光への経済波及効果も期待できる」と喜んだ。
 コレクションは東京のイベント企画・制作会社「F1メディア」などでつくる実行委員会が主催する。県、郡山市の後援。

2014年1月20日月曜日

3号機 冷却水が格納容器から漏れたか 1月20日

via NHK   1月20日5時12分
よりにもよってメルトダウン燃料を冷やしている格納容器からのもれ...当然、線量は高すぎて作業不可能。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140120/k10014606581000.html
「東京電力福島第一原子力発電所3号機の原子炉建屋1階の床を流れている水を調べたところ、放射性物質の濃度が高く、メルトダウンした燃料を冷やした水が格納容器から漏れている可能性が高いことが分かり、東京電力では、詳しい漏えい箇所などを調べることにしています。
福島第一原発3号機では18日、原子炉建屋1階の床に幅30センチほどの水の流れがあり、継続的に排水口に流れ込んでいる様子をがれきの撤去作業をしていたロボットのカメラが捉えました。
東京電力が調べた結果、1リットル当たりの放射性物質の濃度はストロンチウムなどのベータ線と呼ばれる放射線を出す放射性物質が2400万ベクレル、セシウム137が170万ベクレルと建屋の地下にたまっている汚染水の値に近い、高い濃度であることが分かりました。
水の温度はおよそ20度で、原子炉の底の温度とほぼ同じだということです。
東京電力は、「地下にたまった汚染水よりやや濃度が低いが、何らかのルートで格納容器から漏れ出した水と考えられる」と話しています。
3号機ではメルトダウンした燃料を冷やすための水が原子炉に注がれ、格納容器の破損箇所から漏れて建屋の地下にたまっていますが、燃料の状態や格納容器の破損状況は分かっておらず、東京電力は詳しい調査を行うことにしています。」
ちなみに、18日の段階で、東電は「出所不明の水」「雨水の可能性高い」といっていた。今回ばかりは、認めるまでの期間が短すぎで、かえって不気味。
福島 原子炉建屋で出どころ不明の水 1月18日 19:31
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140118/k10014590541000.html
「東京電力福島第一原子力発電所3号機の原子炉建屋1階で、出どころが分からない水が床を流れているのが見つかり、東京電力が発生源などを調べています。
東京電力によりますと、18日午後、福島第一原発3号機の原子炉建屋1階で、遠隔操作のロボットを使ってがれきの撤去をしていたところ床を水が流れている様子がロボットに搭載されたカメラで確認されました。
水が流れていたのは、原子炉からタービンに送られる蒸気を事故の際などに遮断する弁がある「主蒸気隔離弁室」と呼ばれる部屋の入り口付近で水の流れは幅30センチほどあり、継続的に排水口に流れ込んでいて、汚染水がたまっている建屋の地下に向かっているとみられるということです。
原子炉建屋には、メルトダウンした燃料を冷やす水や使用済み燃料プールの水のほか、建屋が壊れているため、雨水などもあるとみられ、東京電力は、「現時点では、どこから流れてくるかや放射性物質の濃度は分からない」としています。
現場は放射線量が高く人が近づけないことから、東京電力は、カメラの映像を分析して、水の発生源などを詳しく調べています。」

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もって行き場のない怒りが、おさまらない。
とにかかく、収束だなんて、いわせない。



「チェルノブイリ法」の全訳:「チェルノブィリ原子力発電所における大災害の結果として放射線の影響を被った市民の社会的保護についての法律」

チェルノブイリ事故から5年目にできた、通称「チェルノブイリ法」。汚染地帯での移住適応、医療保障などをさだめています。その全文訳(仮訳)が公開されています。日本の「原発事故こども被災者支援法」にも参照されたもの。核惨事下で、参照点となる法。
ずっと読んでみたいとおもっていたところ、ロシア・東欧法の小森田秋夫さんの尽力による全文翻訳。じぶんのできることで状況に関与する。こうした地味な作業には敬意です。


「チェルノブィリ原子力発電所における大災害の結果として放射線の影響を被った市民の社会的保護についての法律」(1991年5月15日付)
http://ruseel.world.coocan.jp/Chernobyllaw.htm










2014年1月3日金曜日

東京新聞 2014年1月1日 「草の根安全神話」エートスプロジェクト@福島での記事

チェルノブイリ事故後の社会管理システムとして悪名高い、主にフランスの原子力産業が展開したエートスプロジェクト。

1991年にチェルノブイリ法ができて、移住の権利や保障が認められて......と一般的にいわれていますが、一方で、汚染地帯にすむこと、とどまることを「住民の主体的選択」の結果として、倫理的に称揚したプロジェクト。

そのエートスの福島での展開について、おそらくはじめて批判的に切り込んだ記事。
批判すると、「市民が自律的に、主体的にとりくんでいるんだから!」という反論も多く、触れることがむずかしかったのかな?とおもいますが。第一歩。
「国際原子力ロビーの犯罪」(以文社)http://www.ibunsha.co.jp/0314.html
で指摘されているように、このエートス・プロジェクトの問題は、住民たちの放射能に対する不安からのとりくみを、あたかも倫理的であり、美しいものであるかのように、認めてしまうという点。
移住の権利や充当な保障ではなく<被ばくの受忍>を正当化する核惨事後の社会管理システム。

いっそうの戦慄をおぼえるのは、こうした「自己責任」を正当化・美学化する空気に、新自由主義を経由したこの日本は慣れきってしまっていること。

放射能を避ける、怖かるというあたりまえの行為を、「草の根 安全神話」がづーっと迫害しつづけてきたことからもあきらか。
記事をみても当の福島でのプロジェクトは、閑古鳥が鳴いているようだけど、それはあえてこうしたプロジェクトが必要ないほど、日本の空気全体がすでにエートス・プロジェクトなこと。「自発的従属」におあつらえむきな国であること。


東京新聞 2014年1月1日