2013年10月4日金曜日

原子力と女 バーバラ・ジャッジという妖怪 その1

昨年9月に東電内に事故を受けての「原子力改革監視委員会」という組織が設置され、元・米国原子力規制委員会のデール・ワイデンが委員長に、副委員長には英国原子力公社名誉理事のバーバラ・ジャッジという女性が就任した。あまり話題になっていないけれど、再稼働、原発維持のための強力な人選。このふたりの招聘で東電はいったいどれだけの報酬を払ったのかだけでも十分いぶかしい。が、それ以上にバーバラ・ジャッジという女性の言動は看過できない点を多々はらんでいる。去年の秋ごろ海外の反原発運動は、彼女が東電内の役員に就任することでおおさわぎだったのだが、彼女の珍妙でキテレツな姿に目をとられ、かえって油断してしまったのが甘かった。とんでもない要注意人物。



   バーバラ・ジャッジ 英国原子力公社名誉理事。昨年9月からTEPCO・原子力改革監視委員副委員長に就任


バーバラ・ジャッジはもともと米国の金融畑の弁護士。イギリス人と婚姻し、2000年代に入るとイギリスの年金改悪に貢献。さらにかつてサッチャーでもなしえなかった英国原子力公社の事実上の民営化に手を付け、不採算部門の原子力を存続させることに成功。その功績によって、英国原子力公社の理事に就任。さらにインドのジャイタプール原発建設や、中東への原発輸出にも一役買っているらしいことが経歴からうかがえる。

といっても彼女自身、原子力そのものにはまるで縁がない。あくまで金融畑のひと。改革監視委員就任にあたっても「日本のような資源に乏しい国には原子力が必要不可欠」と特段、目新しいことをいっているわけではない。おそらく東電が彼女を招聘したのは、事故にともなう経営危機を軟着陸させることが主な目的に違いなく「東電の経営収支安定のためにまず柏崎刈羽を再稼働させるのが、第一のミッションである」とも語っている。ともかく無慈悲に金をうごかすのにたけた人材、ということだ。また、彼女の経験は新自由主義と原子力産業の交錯点そのものを体現してもいる。


こんな風に、東電原子力監視管理委員会就任にあたって欧米圏で揶揄され、
大騒ぎされているので、最初なんだろう?とおもった。


イギリスでは年金改悪の立役者としても、ひとびとに嫌われている模様。


と同時にもひとつ見逃せないのは、彼女自身が東電改革監視委員会内で語るようにイギリスでの「狂牛病対策」から編み出した、危機管理に際してのソーシャル・コミニュケーションの手法を強調している点。ソーシャル・コミュニュケーションというともっともらしいが、つまり、失墜した原子力に対するひとびとの不信をいかに、なだめ、ごまかしていくかということ。原子力VS日々の暮らし。核VS不安をもつひとびと。その圧倒的に非対称な暴力をおおいかくすための罪つくりな「方便」なのが、みえみえ。
 
彼女の動きに即してみてみよう。

 2013726日には、委員長のデール・ワイデンとともに東電社長も含めて、外国人記者むけに記者会見。ここでワイデンと彼女は、東電のこれまでの対応について多くの記者を前に公然と批判をしてみせる。

 ◆福島第1原発、汚染水流出に専門家委員会から批判噴出 APF通信:83
 http://www.afpbb.com/articles/-/2958809?pid=11090490



バーバラいわく「東電の情報公開性の欠如に本当にがっかりした」「原発の廃炉作業は複雑で難しいプロセスであるため、今後も問題が生じることは必至だろうが、次に問題が起きたときには今回の誤りから学んで人々にいち早く、状況とそれを改善する東電の計画を知らせてもらいたい」。国内報道や反原発をめざす人のあいだでも一瞬、「胸のすく」ような会見ととらえられてしまったことは事実。さらに「海外の専門家」ということで印象操作が与えられ、<無能な東電>VS<原子力に知悉する人>、というさしあたりの構図のもとで、彼女とワイデンがこうした東電内の委員をつとめていること自体の問題性は、見事に後景化してしまった。

2013729日付の「東電原子力改革監視委員会」のwebでは、この会見に先立つ75日に東電ソーシャル・コミュニュケーション室を訪問し、綿密な打ち合わせをおこなっている様子。

(薄気味わるくURLをはりつけることはしません。各自「げんしりょくかいかくかんしいいんかい」と検索してぜひ見てください。一見の価値あり)

さらに気になるのはこの726日の会見を境に海外の「汚染水」報道が堰をきるようにだんだん増えていったこと。とりわけ彼女の本拠地イギリスのBBC放送ではトップ記事、しきりに東電汚染水のニュースが放映されている。
推論するに、東電はこの二人の<周到に用意されたパフォーマンス記者会見>により、いったんは謝罪のポーズをとらされ、そのうえで外堀から「汚染水問題」についてせめたてられ、隠せなくなっていくという、軟着陸路線が逆に可能になったのでは?ということ。おもえば汚染水問題はすでに今年の4月にも、IAEAによって「緊急課題」との指摘をうけている。が、東電自身が言及するのが7月そして選挙終了後から発表、この記者会見を受け、それでも8月中に情報を限りなくこだしに、たらたら発表した結果、日本国内の動揺も断続的になり、人々の関心の持続性もついていけなくなる。そうこうして9月のオリンピック開催発表になだれこめたという推測も可能だ。さらにはイギリスでの彼女の人脈からしてIOC委員会との関連もあるのでは....と邪推してしまう。

東京でのオリンピック開催は、安倍や石原の目先の利益や欲望を超えて、今後、途上国、新興国に原発セールスを展開したい原子力産業からしても「未曾有の危機の克服」という物語つくりにうってつけだ。もはや欧米ではコストにみあわないというのが常識で、「斜陽産業化」しつつある原子力産業が生き残るために、世界の原発立地地図を再編すること。数年かけて、ナオミ・クラインみたいな視点で「災害資本主義」の「核惨事版」が書かれてしかるべきかもと思う。

思えば、チェルノブイリ事故後、電力会社は<ソーシャル・コミュニュケーション>をことさらに重視し、宣伝活動や・情報政策、住民参加型説得に心血を注いだ。女性に親しみやすい電力会社というイメージ戦略のために、キャラクター「でん子」を登用したのはあからさまにもチェルノブイリ事故翌年の1987年のこと。そのころから女性雑誌への広告が格段に増えていく。いまからふりかえるからこそ、みえみえではある。だから、福島級の事後処理、失墜回復のための印象操作となれば、これぐらいのことは平然とやってのけると思っておいて、まちがいはないと思

敵のやることは、安手の芝居じみている。だけど、いや、だからかなのか敵は、思うより手ごわい。

つい長くなってしまった。本題の、バーバラ・ジャッジがソーシャル・コミュニュケーションの対象として、母親たち、女性たちをどのようにみているかについては、以下つづく。

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