2013年12月31日火曜日

東京新聞 2013年12月27日 フクシマめぐる安倍政権1年


東京新聞 2013年12月27日 「こちら特報部」より

この1年、自民党安倍政権が日本版NSC法、秘密保護法、靖国参拝と、いろいろやらかしたせいで原発事故そのものの関心が、それてしまったような感があります。

「政治」そのものが、ものごとをかくしていく過程であることがよくわかった1年でした。
核惨事下を生きていることを忘れないために。 
以下、年末の記事を記録として。








◆福島原発事故をめぐる安倍政権の1年・「東電救済=被災民切り捨て+国民負担」
 
 今月に入り、立て続けに福島原発事故をめぐる重要な施策が決まっている。26日には原子力損害賠償紛争審査会が避難指示解除後、原則1年で慰謝料を打ち切ることなどを決定。27日には、東京電力の新たな総合特別事業(再建)計画が政府に提出される。一連の動きは「被災者と国民の負担による東電救済」と要約できる。「脱原発依存」の選挙公約を覆した安倍政権の結論だ。

◆国民負担増やし 東電を救済
「東電は『事故責任』を取らず、被災者は『自己責任』を負わされる。こんな矛盾したやり方はない」。慶応大の金子勝教授(財政学)は皮肉交じりにこう非難した。 今秋以降、政府などが打ち出した福島原発事故についての施策はいずれも、加害者の東電の救済と被災者の切り捨てが前提になっている。汚染者負担の原則などどこ吹く風で、税金や電気料金の形で国民に一層の負担を強いるものばかりだ。

◆中間貯蔵施設 除染費も税金
 今月20日に政府が決めた復興指針にある東電支援策では、賠償や除染に関する資金の支援枠を現行の5兆円から9兆円に増やす。5兆4000億円と見積もる賠償費用こそ東電を中心とした各電力会社の負担で変わらないが、除染費用2兆5000億円と、放射性物質で汚染された土壌を一定期間保管する「中間貯蔵施設」の建設費用1兆1000億円は国が全額負担する。 除染費用は、原子力損害賠償支援機構が保有する簿価で1兆円分の東電株を将来的に売却して賄う予定。ただ、この株は政府が昨年7月に東電を実質国有化した際に投じた税金の対価だ。本来なら、売却益は国庫に戻して、除染費用は東電に負担させるのが筋だ。
 過去の例では、産業再生機構(2007年に解散)はダイエーやカネボウ(現クラシエ)を再建させた後、残った資産を国庫に納めた。東電だけを特別扱いするやり方に批判は少なくない。 さらに「国が前面に出る」ことになった汚染水対策でも、当初の470億円から220億円上乗せし、690億円を政府が肩代わりする。 東電優遇の施策は、それだけにとどまらない。経済産業省は10月、電力会社の会計規則を見直した。原発を廃炉にする費用は特別損失として当該年度の決算に一括計上しなければならなかったのを、複数年度に分けて処理できるようにした。

◆廃炉の損失を電気料金転嫁
 以前は多額の損失が一気にのしかかって経営危機に直結するため、廃炉は現実的ではなかった。今後はある程度進むとみられているが、国民の負担はむしろ増す。廃炉費用を電気料金の原価に含められるようにしたからだ。電力会社救済のために、ここでもツケは国民に回る形にされた。
 こうした施策を次々に打ち出した政府の狙いは東電と、東電に出資している金融機関を守ることにあるのは明らか。金子教授は「国が相当の金額を肩代わりするにせよ、東電には10兆円以上の借金が残る。返せる当てなどないのだから、破綻処理しかない。このままのやり方では国民負担がどんどん増えるだけだ」と警鐘を鳴らしている。

◆被災者切り捨て そして再稼働
「被災者切り捨て」の動きも顕著だ。政府は先の復興指針で全員帰還の原則を断念、原状回復の大方針を捨てた。 26日に開かれた文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会では、原発事故で帰宅の見通しが立たない「帰還困難区域」の住民に対し、東電が慰謝料として、一括して一人当たり700万円を支払うことが決まった。 これまでに支払われた慰謝料の将来分と合わせた賠償額は、1450万円になる。それでも住み慣れた故郷を追われ、職場や学びの場を失ったことへの代償として十分だとはいえない。  
 帰還を促される被災者にも厳しい。避難指示が解除される地域への早期帰還者には数十万円の賠償が上乗せされるが、慰謝料は解除後、原則1年で打ち切られる。街全体の復興を顧みず「早く戻れ。後は自己責任で」といわんばかり。被災者からは「手切れ金」と評する声が上がっている
 原子力規制委員会が示した解除の目安は空間線量が年20ミリシーベルト以下。飲食が禁じられた放射線管理区域の線量が、年換算で5.2ミリシーベルトであることと比べると異常だ。さらに政府は規制委の提言に基づき、帰還時の被ばく線量を従来の空間線量から個人の実測線量に変更することを決めた。 数値は事実上、空間線量より低くなる。復興指針には「年間被ばく線量1ミリシーベルト以下」とあるが、あくまで「長期目標」の値にすぎない。

 これらの施策には除染費の削減がちらつく。除染費は独立行政法人・産業技術総合研究所の試算で5兆円以上とされていたが、2兆5000億円と半分に見積もられた。汚染のひどい帰還困難区域の除染を放棄し、避難指示が解除される区域の線量を個人線量で軽く見せることにより、除染が手抜きされる懸念が濃い。 その一方で、国は東電の救済には手厚い。 6日にまとまった経産省のエネルギー基本計画の素案には原発が「重要なベース電源」と明記され、民主党政権の原発ゼロ方針が転換された。
 待っていたかのように東電は25日に新しい総合特別事業計画をまとめた。柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機を来年7月から再稼働する見通しが盛り込まれた。27日に茂木敏充経産相に届け出され、年明けにも認定される運びだ。

◆値上げ「人質」 原発を再稼働
 東電が再稼働に熱心なのは収益を上げたいからだ。東電側は再稼働が遅れれば、値上げもあり得ると、電気料金を人質に再稼働を迫っている。 金融機関11社は26日、東電に対し、新規と借り換え分の計5000億円の融資を行った。再建計画を受け、14年度以降、安定した黒字化が見込めると判断したためだ。政府と東電、金融機関はがっちりとスクラムを組んでいる。 京都大大学院の植田和弘教授(環境経済学)は「廃炉に向けた会計規則や汚染水対策への支出など、東電への特別扱いは問題。事業者のモラルハザード(倫理観の欠如)を招きかねない」と批判する。 一連の政府の施策は電力会社が原発事故を起こしても責任を問われず、国が救済するという前例にもなりかねない。
 植田教授は、東電を破綻させずに賠償させるやり方に無理があったとみる。「この仕組みでは、東電は賠償原資確保のために電気料金引き上げや原発の再稼働を図り、損害賠償の金額を節約しようとする。今からでも遅くはない。東電の経営者や株主、貸し手の責任を明確にすべきだ」

[デスクメモ]
戦争で亡くなった身内を悼む。人の優しさだ。原発事故の被害者を救済したい。これもそうだ。そうした善意を「神話」で包み込んで、権力者が逆手に取る。靖国も原発も、その構造はカルトや悪徳商法と同質だ。そんな醜悪な現実を意識させられた年の瀬。問われているのは「個」の自立と確認する。(牧)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013122702000146.html

2013年12月26日木曜日

「見えない子供、見てない大人」 鬼一家

Invisible children, Adults neglect them

By“ONI” Onahama, a small deserted port town in Iwaki rooted hiphop.


「見えない子供、見てない大人」 



by 鬼一家  


教・育・者
おれたちの言葉をどう見るか 
お前らの言葉もショウビズだ

ひょうたんから放たれたことだまは 
知識がかなでた音だから

 最近のがきが怖ぇえだと? 
てめえら大人の方が
よっぽど怖ぇんだよ

 殺されるぐれーなら殺しちまいな 
呼吸をする しねぇの違いが
どれだけ、でかいか

この世界が無くなるなんて
考えられないから 
だから殺す権利なんて到底無い

ー小名浜 rooted hiphopー

あらわれや、ことばがちがっても怒りの矛先がおなじなのをかぎつけた。
「殺されるぐれぇなら殺しちまいな」これぐらいのテンションない問いは全部くだらなく思える
じぶんら、殺されかかったんだしだれかを殺しにかかってるんだから。
さかしらな批評、うわずったことば、邪魔。もう全身全霊でスルー。

小名浜 2008年
“行ったり来たりが歩幅なのかもね”




そういえば、畠山静香が福島刑務所内に服役していて具合があんまりよくないっていう記事をちょっと前にどこかで読んだのを思い出した。どうなったんだろう。
あのあと、こどもが殺されるまでもなく、
たんにおきざりにされたり、餓死してしまったりっていう出来事がひっきりなしにおこっている。
いろんな場所のくぼみでおこっている点と点をむすびつけることばがまだない。
原発事故をはさんで、ますます図にのるいっぽうの過酷さに、おいついくことばがまだない。








2013年12月23日月曜日

冬至(とうじ)、太陽 、原子力


「冬至」=とうじがすぎて,この日を境に、だんだん日照がながくなるというふしぎ。
からだの中の何かも、底を打つかんじ。

----もうこれ以上
----暗くならない、
----これからはもう明るくなるばかりだ。

ビートニック、ゲーリー・スナイダーたちと親交のあった、山尾三省さんの詩。
そういえばハキム・ベイは、どこかで、「冬至は、混沌の日、アナーキーの日」だといっていました。

のんきに<自然>のアナーキーをよろこべなくなってから、
三度目の冬をむかえます。

それでも<自然>の暴力は、あなどれなくて、
過酷な冬は、いのちをいやがおうでもふるいにかけます。
日がのびていくのと裏腹に、冬至から節分ぐらいまでがいちばん過酷。

----もうこれ以上
----暗くならない、
----これからはもう明るくなるばかりだ。


だからなおさら三回目の冬ともなると、これまで生きようとしてきた、よく生きたことを
よろこびたい気持ちがわいてきます。


『冬至』 

冬至の日になると
僕たちは 
じつは太陽を頼りとし
太陽のおかげで生きているのだとわからされる

もうこれ以上 
暗くならない
これからはもう明るくなるばかりだ

太陽があれば
僕たちはその下で 
皆で生きたり死んだりすることができる

もうこれ以上暗くならない
これからはもう 
明るくなるばかりだ

一本の椎の木に 
僕は語りかける

椎の木よ
あなたたちと僕たちの 
今日は本当のお祝いの日だね

これ以上暗くはならない 
自然生のものたちの

本当のお祝いの日だね

冬至の日になると毎年
今がどん底で 
どん底がきたから
もう大丈夫なのだと 
わからされる

                   山尾 三省


こどものとき、まだ寒いのに夕方のチャイムがなる時刻が、
だんだん明るくなっていくのがうれしかった。
遊ぶ時間が、だんだんながくなるのがうれしかった。

いまは椎の木にはなしかけるどころか
汚染されていない、椎茸を探すのに、かけずりまわったり、あきらめたりしている。

そうこうしてるうちに、からだの中の何かが、底をつくかんじ。
三度目の冬は、いつになく太陽がかっこいい。
その下で、生きたりできるから。



あのサンチャイルドといかいう、でかぶつのこどもを、なんとか逃がしてあげないと....












2013年12月22日日曜日

ちょうちん記者のちょうちん記事 「福島の子のがん、被ばくとの関連は結論でず」朝日2013.12.21報道

いったい、いつまで提灯 ぶら下げてるつもりかね?

 福島 23万9000人:58

 通常 100万:5~10 

朝日新聞2013年12月21日
「福島の子のがん、被ばくとの関連は結論でず」 
水俣病の折、大手報道機関が一貫して、チッソとの関係はないとか、にせ患者キャンペーンをはったことのくりかえし?またまた、大沼ゆりという記者です。通常の数十倍の発症率となってもまだ、放射線医学界の見解をうたがっていない。両論併記したうえで、否定側が正論であるかのような記事にまとめてしまう。ちょうど去年の冬にもWHOの健康被害報告が一面で報道された折の記者でづーっと「因果関係はない」というトーンをくりかえしています。世紀の提灯もちとしてその名を、胸にきざんでおくことにします。

朝日新聞2012年11月25日
「福島のがんリスク、明らかな増加見えず WHO予測」
http://shinjyukusunabaproject.blogspot.jp/2012/12/who20121125.html
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【野瀬輝彦、大岩ゆり】福島県の子ども59人で甲状腺がんやその疑いが見つかったことについて、環境省福島県は21日、専門家の意見交換会を開いた。東京電力福島第一原発事故による被曝(ひばく)の影響が現時点で現れていることを否定する意見が多く出た一方で、「被曝による多発」を疑う指摘も出された。県などは今後の検査結果も分析して、被曝との関係を詳しく調べる方針だ。
 甲状腺検査は事故当時18歳以下を対象に行われ、9月30日現在で約23万9千人のうち59人ががんやがんの疑いと診断された。うち1人は良性だった。
 検査を行っている県立医大の鈴木真一教授(甲状腺外科)は、これまでに見つかったがんやがん疑い例について「被曝の影響とは考えられない」と話した。その根拠について「がんが見つかった子どもの年齢分布も10代後半が多く、若年齢が多いチェルノブイリとは異なる」などと説明した。
 これに対し、岡山大の津田敏秀教授(疫学)は、国内のがん登録の結果から、10代後半~20代前半の甲状腺がんの年間推計発生率は、「平均(1975~08年)は100万人当たり5~11人」と指摘。その上で「福島の子どもの甲状腺がんの発生は数倍~数十倍高く、多発と言える。今後さらに増える可能性もあり、今のうちに対策をとるべきだ」と主張した。
 津田さんの指摘に対して、県立医大の大平哲也教授(疫学)らから、福島の検査と「がん登録」と比較をするのは、科学的に不適切などと批判が出た。がん登録で集計されるがんは主に、症状が出てから受診して見つかったものだが、福島の検査は、無症状の子どもを網羅的に調べており、より早期に多く見つかる傾向があるからだ。
 郡山市医師会理事で小児科医の太神和広医師は「県外の子どもに大規模な甲状腺の検査をして比較すべきだ。そうすれば1年以内に科学的な結論が出る」と訴えた。環境省は、長崎や青森の子どもの甲状腺検査を行ったが、対象は4500人だけで、これまで、がんは見つかっていない。
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2013年12月21日土曜日

カリフォリニア州バークレー市議会が福島原発事故に関して決議


12月17日、カリフォルニア州・バークレー市が福島原発事故の影響に対するとりくみの
議決を採択したそうです。なんだかすごい快挙らしいです。



採択するように公聴会につめかけたひとびと。味わい深いおばちゃんが次から次へと登場します。

15:15ぐらいから「環境レイシズム」(解放出版)の風砂子アンジェリスさんも。
時間オーバーもゆうゆう無視して、とうとうと熱弁。日本から移り住んだ私の友人も。

バークレー市はイラク戦争反対の決議をした市。
1)国際機関による、事故処理にとりくむこと、2)今後バークレー市として、福島原発由来の放射性物質による汚染について、空間線量、土壌。食品などの計測と情報提供を州や政府がしっかりやるように促すという内容です。

1)はIAEAがすでにかかわっているし国連もなあ。。。なので、なんとも言い難いのですが、2)についてはよろこばしい。日本では、もうすっかり放射能などないかのよう(=事故などおこらなかったよう)にふるまえという無言の空気が漂っています。人の関心もうすれて。。。

でも、チェルノブイリ事故のあとも、世界中に汚染が広まって、反放射能さわぎがひろまるのに2年~3年のタイムラグがありました。今年の5月からは、韓国では、汚染水放出への抗議と、水産物の輸入禁止と、日本大使館前で抗議が定期的におこっています。こういううごきが増えて、ちょっとでもこのおかしな空気の風穴になればいいなと思います。
反原発いいながらfacebookにごはんの写真ばっかのせてる場合じゃあないですよ。
とても、ぼんくらにみえるらしいです。


                   

“Silence Defeating Fukushima fall out Mother's Response”  Kimbery Roberson

事故からまもなく、カリフォルニアでのフォールアウトと食べ物の影響について母親たちのための本がでています。キンバリー・ロバーソンさんという、栄養士で反原発、フラッキングにも反対している環境活動家のひと。そういえば、日本のがれき広域処理と焼却に反対していちはやく、日本領事館に抗議・要請をしていたひと。

Fukushima fall out awareness net work 福島フォールアウト・アウェアネス 
合衆国の食品放射性基準値をひくくしろという主張をしています。
http://ffan.us/media

Fukushima's Hot water :Now Fallout in our KITCHEN ? 台所にフォールアウト?
http://www.ontheissuesmagazine.com/2012fall/2012fall_Roberson.php

2013年12月18日水曜日

A Guide to Radiation."What you need to know to protect yourself and loved one"英語版放射能防御ガイド

海のむこうで、反原発・反被ばくにとりくむ友人が、原発事故の私たちの経験を踏まえて、英語版の被ばく入門、放射能から身を守るためのパンフレットを完成しました。

政府は安全キャンペーンの一環で、観光客誘致にやっきになって、こんな惨事にもかかわらず海外からの訪問者も増えているそうです。あーこの調子でオリンピックも開催できちゃうんですね。

あと結構、運動や学術シンポジウムなんかでもいまだひっきりなしに海外からのゲストがやってきて。反原発だったり、志をおなじくしたりするひとたちもいたりして。
でも、はたしてそれでいいのか。たとえ「連帯」や「交流」とかいっても、3.11の前のままのように日本、特に関東以北に人を呼んで<ようこそ>なんて無邪気に言っていいものか?じぶんじしんも、のびのび暮らせていない場所で、と思ってきました。

あと、日本の「経済力」にあかせて、東京という都市の「何もおこってません神話」の演出に加担してしまうのでは?という疑問をもってきました。都市が一応機能しているかのようみえることで、そのバックヤードでなにが起こっているか、隠すことができますから。

Traveler's guide to avoid radiation in Japan


         
          



まず↑このガイドは、首都圏も外務省や観光局のいうようには安全ではないこと、留意すべきこと、信頼できる測定情報、さけたほうがいい食物のことなどについてのってます。日本を出て暮らすひとたち----そしてとくに女性の目線を通じて、たべものや暮らしからみた、日本社会のゆがみや、いびつさが、はっきりみえるということもあるんだとおもいます。すみなれた土地をはなれてくらすからこその重心の低さ。


思えば、2011年3月11日以降、ほんのちょっとでも放射能について聞いたことがあるとか、広島・長崎の原爆投下後の<黒い雨>とか<ピカの毒>とか科学未満の人々の<言い伝え>をおもいだしたとか、チェルノブイリ事故でスパゲティーを給食につかうな!とさわいでいたおばちゃんたちのおぼろげな記憶がある、ということがのちのちの判断のささえになったなと思います。ひとを救うのは時に、「正史」や「正論」では決してなくて、騒動の記憶や、手渡しの生きるための術。

シンプルな入門ガイドのかたちにのなかに、いろんな意味と思いを読みとりました。



PDFでダウンロードできます。A guide to radiation VOL.1
まずは留学生のいるところとかで配布してみようとかなと思います。


こういう小さなインディペンデントなかたちを、ささっと作ること、自分たちがこの2年まのあたりにしてきたこと、じたばたしてきたこと、原子力がもたらす、人間の軋轢、分断、いまも経験していることも含めて散布すること、伝えることは、任務っていうか、世界にとってかなり大事なことなんでないかと思います。 黙々と、<よく生きる>ことに専念しているたくさんのひとたちがいます。ありがとう。



2013年12月16日月曜日

国土強靭化法成立。

12月の国会はもっぱら秘密保護法がさわがれていましたが「国土強靭化法」というものものしい名称の法律も成立しています。
震災後、内閣府で「ナショナル・レジリエンス懇談会」なるものを組織して検討してきたらしいです。

この<レジリエンス>という言い方がくせもの。自然科学や精神分析で、「精神的回復」「再生」などと、ひとの蘇生のちからに対して肯定的なニュアンスも含めて使われるようになったことばが先取りされています。


また、国土強靭化法大綱のなかでは災害弱者に配慮した云々の文言もみられ、悪しき包摂も。

内容をよく見ると、災害・復興資本主義のさいたるもの。
復興 Reconstruction を Resilience といいかえただけのかくれみのです。


「災害に強い国土つくり」を口実に、道路・施設の補修、に投資。
さしあたり東京オリンピックの開発の首都圏大規模補修も目的なんでしょうね。
全総時代への逆行、開発主義への逆行ともいわれているようです。

国土強靭化法のうごき
http://yamba-net.org/%E5%9B%BD%E5%9C%9F%E5%BC%B7%E9%9D%AD%E5%8C%96%E6%B3%95%E3%81%8C%E6%88%90%E7%AB%8B/

国土強靭化法案Q&A
http://stop-kyoujinka.jp/qa.html


国土を強靭化する<つもり>でも、いったん拡散した放射能はずーーっと消えません。

レジリエンス=回復をうたいながら原発事故被災者支援法や被ばく対策などのケアはいまだ無策。

ひとのいのちや身体よりも、巨大な公共投資がさき。都市計画も、はこものがさき。
まるで倒錯した世界です。






2013年12月11日水曜日

チェルノブイリと世界銀行



昨年秋、東京で49年ぶりに世界銀行総会が復興のセレモニーとしてひらかれたことは記憶に新しいです。
いまにして思うと、東京オリンピックの前哨戦だったといえます。
つい最近、世界銀行ジム・ヨン・キム総裁は貧しい国での電力開発の必要を認めるも原発開発に"Nuclear power from country to country is an extremely political issue,"/「原子力発電の輸出入は極めて政治的な問題」として難色を示している模様です。代わりに水力・地熱・風力発電に重きをおきたい意向で、おそらく小国の核武装を抑制したいという意向も手伝っての、エネルギーシフトのほうが経済成長にとって有効な投資であるとの判断からの発言でしょう。

ところで、世銀といえば2013年に入ってからもなんと、事故による放射能汚染地区の回復プロジェクト
POST-CHERNOBYL RECOVERY - ADDITIONAL FINANCINGとしてベラルーシ共和国に追加融資をしているということを最近しりました。どおりで。チェルノブイリのWHO、国連科学委員会健康調査などの資料をみていると、かならず「世界銀行」のマークも入っているので、おや?と思ったのです。


世界銀行の融資といえば、とりわけ第三世界各国に福祉切り捨て、公共料金の自由化/値上げ、公務員の縮小などを条件づけて、借金をさせるということはよく知られ、自由主義経済を促進させるもの、ひとびとの貧困化をもたらすものとして、この数年間、多くの批判や抗議の対象となってきました。ベラルーシの融資とくれば、ある意味、核惨事の弱みに乗じて借金をさせているともいえます。

ここでは、ベラルーシのモギリョフ、ゴメリなどの汚染地域の学校の暖房、照明などインフラ、住居整備に融資をしている模様です。ただ、このページを辿っただけでは、どのような「条件」がベラルーシに課されているのかまでは辿れません....実はチェルノブイリ事故についてはソビエト崩壊の一因となったとよくいわれるものの(それは一方で汚染地帯を抱えさせられてしまったウクライナやベラルーシの新自由主義経済への包摂の過程でもあったわけです。ちなみに「チェルノブイリ法」の制定は1991年。ベラルーシの世銀加盟はその翌年。)、私たちはまだ何も知ってはいない、わかってはいないんだなと思います。こういう観点からの研究があれば読みたいと思います。

反動 20mシーベルトへの<帰還> 

この秋から冬にかけ、IAEAと福島県、IAEAと原子力規制委員会の特に被曝をめぐってのすさまじい巻き返し/反動がおこっています。

事故直後の2011年の4月には内閣官房参与の小佐古敏班が「年間20ミリシーベルトという被ばく量は、原発作業員でもめったにでない数値」として辞任し、あれほど抵抗のあった「20ミリシーベルト」への人々の反応も、いまはそれほど高まっていません。はじめの予想通り“被ばく”という事実は、さまざまな印象操作や隠蔽、そして人々どうしの軋轢やコンフリクトによって、しだいに「忘却」の一途をたどっているようです。 
時間はすぎたようで、被ばく対策で進展したことはなにひとつとしてありません。
また2011年の3月時点に退行しています。

こうして一連の流れを書き出してみると、チェルノブイリ事故同様に、核惨事がグローバルなできごとであると同時におおかたの道筋がある種のシュミレーションを通じて反復されていることに愕然とします。
これまで国内の「安全キャンペーン」だけを批判していればことたりていたのですが、これから、もっと大きな外枠をみすえていかないとならないでしょう。


2013年10月22日
1ミリシーベルトに「こだわらない」/除染目標でIAEA団長/環境相に中間報告提出
http://www.47news.jp/47topics/e/246857.php

2013年10月28日
国連科学委員会福島報告書提出される
福島事故の被ばくは影響なし?「国連科学委員会」報告に異論相次ぐ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20131027-00029263/

2013年11月8日
追加被ばく「年間20ミリシーベルト」で影響なし 規制委住民帰還へ提言
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131108/dst13110814110005-n1.htm

2013年11月5日
自民党・石破幹事長「帰還不能地域の明確化を」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131105/stt13110511510001-n1.htm

もはや「食べて応援」を批判していればいいだけですまされなくなっています。
IAEAものりだして、グローバル安全神話の域にフェーズが移行しています。


IAEA調査団長福島近海の海産物は「安全性が保障」
のニュース 2013年12月5日

(一方、IAEAは汚染水の海洋放出を東電と日本政府に推奨しています....ふつうに怖い)


ただ、一点、チェルノブイリ時とおおきな相違があるとすれば、規制委のだした「帰還」方針の基準として、環境の放射線量ではなく、個人の被ばく線量を基準としたところ。

2013年11月11日
住民帰還「個人被ばく量で判断を」規制提言案


これは一見するとみのがしてしまいがちだけれども、「個人」の身体の被ばく量という点を基準においたのはきわめて大きな変化。
放射線量の被ばくは<個体によってことなる>という事実を、逆手にとっていることです。その上で、帰還のぜひを判断せよとしています。テクノロジーの精緻化、小型化という要素も手伝っているのでしょうがリスクに対する究極の「自己責任論」、人間が生きる上で、環境や社会は「ないにひとしい」といっているようなもので。ある意味、ハイパーリスク社会。


たぶんいまIAEAがやっていることは、広島でかつてABCCがおこなっていたことと本質は共通しながらも、むきだしの「軍事」によっておこなわれることと、平和利用として、また1970年代、1980年代以降のリスク管理を通じて、原子力産業側が手法を「洗練」させてきた点も踏まえないと、まとはずれなものになってしまう気もします。

2013年12月7日土曜日

Hiroshina peace film festival 2013


 "HIROSHIMA PEACE FILM FESTIVAL 2013" from 6th Dec. to 15th 

インディペンデントで撮影した福島のこどもたちの健康調査についての映画”A2-B-C"も上映とのことで
例年にない緊張感をかぎとりました。
果敢に日本語で山下俊一につっこむ冒頭の激突ぶりがいい。ウクライナ映画祭で人権賞を受賞した作品です。
外からみたいまの状態がいかにいびつか、変なことになってるか。
イアン・トーマス・アッシュ監督のHP
’                            A2                        


2013年11月2日土曜日

原子力と女 バーバラ・ジャッジという妖怪 その3

バーバラ・ジャッジ東電内の原子力改革監視委員会副委員長の就任あいさつ。もう、あからさまにもほどがある。
原発事故以降の、まっとうな怒りや、騒動を鎮圧しようとしてるのが、みえみえ。

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「英国原子力公社の名誉会長をしておりますバーバラ・ジャッジです。
 この度は、東京電力の原子力改革監視委員会の委員を務めることをとても嬉しく思います。とりわけ、女性としてこのような重要な委員会に携われることを光栄に思います。私は英国原子力公社の名誉会長として、原子力施設と共に原子力の安全性と安全文化に重点的に携わっておりました。
 英国では、原子力の安全性を向上させ、一般の方の信頼と支援を得られるように、原子力機関が協力して絶え間ない対策を講じてまいりました。これらの対策により、英国では福島第一原子力発電所の事故以降も、原子力発電が国民から支持され続けることができました。
 私は、原子力は安全性が適切に管理され、技術的専門知識のある確かな機関による支援があって初めて、将来のエネルギー生産の一翼を担うものになりうると考えます。東京電力が安全手順の改革に努めている今、透明性があり効果的な安全文化を確立する一助になればと思います。
 加えて、日本だけでなくどの国でも、様々なグループの中で最も原子力に反対しているのが女性、特に中流階級以上の女性だと思っております。従って、私は女性の観点を持った専門家が原子力安全文化に取り組むことが重要だと考えます。こういった観点から東京電力の改革に喜んで携わりたいと考えておりますし、東京電力が世界的に一流の安全文化を持った企業となることを願っております。
 最後に強調して申し上げたいのは、東京電力が日本国民の安全を守る意識の高い原子力技術者を集めるという前向きな行動を取ったことに対して、私はとても感銘を受けているということです。私たち原子力改革監視委員会は、安全が東京電力の最大の目的となるように、批判的かつ懐疑的な視点を持ちつつ、適切な原子力の安全文化の実現に努めます。」

要するに、女の人や、母親が、原子力や核被害について、判断力をもつことが、邪魔だっていいたいのだ。ふふふふふ。へぇええと思う。名指しされたら、反撃のチャンスだ。

しかも彼女としては、新興国やアジア、中東に原発を輸出することでもあるから、非白人差別、人種主義も混じっている。こんなに二重、三重にも、愚弄されていることに、敏感になったほうがいいと思う。



Strange Bedfellow TEPCO&BARBALA JUDGE
バーバラ・ジャッジのイギリスでの悪業の数々。まとめ。



べつのところで彼女はこんなこともいっている。
■「不信感払拭には、母親の力をー東電の原子力改革監視委員長」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MPG7AZ6S972F01.html
 7月8日(ブルームバーグ):原発再稼働への不信感を払拭(ふっしょく)するには女性の力が必要、との見方を東京電力原子力改革監視委員会のバーバラ・ジャッジ副委員長(英原子力公社名誉会長)が示した。原子力改革監視委員会は国内外の有識者から構成されている東京電力の諮問機関で、原発運営改善の取り組みを外部の視点で監視・監督するため、昨年9月に設置された。ジャッジ氏は唯一の女性委員。
ジャッジ氏は4日、「女性は他の女性に語り掛けなければならない。母親の問題であり、子供を気に掛ける視点が必要だ。教師、医師、看護師、そして母親が必要だ。地域で尊敬され、伝える力を持つ人々が必要とされている」と述べた。
 日本の原発は、2011年3月の福島第一原発事故以降、50基中2基を除き運転を停止している。東電は柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働を新規制基準が施行される8日以降速やかに申請する方針を示している。ピュー・リサーチ・センター(ワシントン)が12年6月に行った調査によると、日本の女性の61%が放射能被ばくを懸念していた。男性で懸念を表明した人の割合は42%にとどまった。
英原子力公社会長、米証券取引委員会ディレクターを歴任したジャッジ氏が原子力改革監視委のメンバーに選ばれたのは、この女性と男性の放射能に対する考えの差を埋める一助の意味もあるのではないかと述べた。ジャッジ氏は「放射能を人は怖がる。見ることができないので魔法のようなものだ。恐怖感があり、原発を持っている人間が問題だという一般人の意見をずっと聞いてきた」と語った。
原題:Tepco’s Woman on the Inside Leading Push to RestartReactors(抜粋)

■「東電の改革監視委員会・副委員長が女性社員と懇談」福島民報 2013年1月27日
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2013/01/post_6077.html
 
東京電力の原子力改革の取り組みについて外部の視点で監視・監督している「原子力改革監視委員会」のバーバラ・ジャッジ副委員長(英原子力公社名誉会長)が26日、東電福島第一原発を初めて視察した。視察後、楢葉町のJヴィレッジにある東電福島復興本社で女性社員5人と意見を交えた。 
 懇談は冒頭のみ公開され、バーバラさんは「男性社会と思われがちな原子力分野で働く女性は多くの人の憧れの対象。原発事故後から収束に向け尽力する姿に感銘を受けた。誇りに思う」などと激励した。女性社員は福島復興本社や福島第一、第二原発などに勤務しており、日常業務全般について説明した。 
 東電によるとバーバラさんは免震重要棟に入り作業の現状を聞き、第一原発を外側から視察した。同委員会は東電取締役会の諮問機関として平成24年9月11日に設置され、国内外の有識者で構成する。



まったく、やだやだしらじらしい。彼女のそろばん勘定と再稼働のためのおためごかし。これじゃあIAEAだの、このひとらに惨事につけこまれてまるまる核植民地にされているままだ。この文脈と構造を、多くのひとたちが踏まえないのがはがゆい。どころか、いまも生き延びようとする女性たちや母親たちの背中にむかっていちいち「ただしい主体」かどうか、適格な主体かどうか、尋問・査問するぐらいしかできない。機能として、バーバラの小役人。一見、良心的にみえて、正しい主体にとっての邪魔者、教化・啓蒙の対象をつねに必要としている。そういえば、バーバラによく似た顔をたくさん知っている。やれ母性主義だ、やれ非科学的だ、やれ家族主義だ、やれ倫理が。

男だったり、女だったり、フェミニストだったり、学者だったり、専門家だったり評論家だったり、左翼だったり、たくさんのバーバラをみてきた。でもそんな小さいはなしはもうたくさんだ。
そんなはなしは、日本の一歩そとを出たらまったく通用しない、うしろむきで、うちむきの
せいぜい小役人のつぶやき程度のはなしだ。


それより、バーバラに名指しで敵批判されている当の騒動の主人公たちは、ちゃんと、そっぽを向いている。 

2013年10月22日火曜日

原子力と女 バーバラ・ジャッジという妖怪 その2(備忘)

東京電力の原子力改革監視委員会のバーバラ・ジャッジが本心を語りだした。一見聞こえがいいようにとられかねないが、そもそも彼女が何の権限でこんな構想を語るのか。「海外の声」「女性」の視点もとりいれた、あたかも<中立的な第三者の専門家>を装う彼女に、こうした構想について口火を切らせるということ自体、彼女の自負する「リスク・コミュニュケーション」の手法なのだろうか。
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2013.10.12 21:27(産経News)

 東京電力の原子力部門の改革をチェックする第三者委員会「原子力改革監視委員会」のバーバラ・ジャッジ副委員長(英原子力公社名誉会長)は12日、産経新聞のインタビューに応じ、福島第1原発の廃炉処理に言及し、「『廃炉』事業を本体から分割し、東電は発送電事業に専念すべきだ」との考えを示した。東電の関係者が、廃炉事業を切り離す構想を明らかにするのは初めて。
 ジャッジ氏は「日本の電力会社は、原発廃炉の知見・経験に乏しい」と指摘。東電は原発事故に伴う損害賠償や汚染水漏れへの対応に人員を集中させており、「長期間かかる廃炉作業にさらに人員を割くべきではない」と主張した。
 他の電力会社も将来的には老朽化原発の廃炉に直面する。ジャッジ氏は「英国のように、政府出資の新会社が国内原発の廃炉を一手に引き受ける案も検討すべきだ」と持論を展開した。
 さらに「小資源国の日本では、原子力発電は必要」と強調。東電改革の進捗について「私のような外国人女性を第三者委員会のメンバーに迎え、『効率最重視』から『安全最重視』へ転換し始めた」と評価し、同社を破綻させるべきではないとの考えを示した。
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バーバラ・ジャッジは<私のような外国人女性を第三者委員会のメンバーに迎え>ている点に触れて、東電改革の進展、安全重視に転換しているといっているが、真っ赤な嘘どころか、原子力産業のこれまでのやり口を強化反復している。スリーマイル島の事故を受けて高まった反原発とそこにかかわる女性たちに関するリン・ネルソンの文章では、当初から原子力産業は女性を主要な「受益者」としてキャンペーンを行った。その背景には

------「女性を特に原子力に消極的な集団とみなし、知識がなく、技術的なことに恐れを抱き、<便利なもの>は欲しがるくせに、その提供者には感謝の念を示さず、放射能の影響や事故がおよぼす健康への影響を過度に恐れ、あらゆる核の問題に対して非合理的なストレス反応を示す。その“強情“さに対抗するためにある世論コンサルタントは、次のようなアドバイスをした。
<女には女をつかえ>」-----


 「すべてを彼女に約束せよ:原子力産業と女性に対する計画」リン・ネルソン
 “Promise her everything:The Nuclear Power Industry's Agenda for Women:Lin Nelson,1984”

という、女性たちへの侮蔑の念が共有されていることを指摘している。一瞥して、女性への偏見一般が焼きまわしで使われていることに気付く。(『女には女を使え:原発産業のジェンダー戦略』「核と向き合う女たち」2011年9月号の引用)

バーバラ・ジャッジの原子力改革監視委員会への就任とそこでの活動もこの使い古された戦略の反復がうかがえる。なんせ彼女自体が、原子力自体の何の「専門家」でもない。金融側面から廃炉コストのそろばんをはじいているだけだ。

それがあたかも権威ある発言のように粉飾され、さらに「廃炉の安定化」を願う人心に訴えてしまうような物言い。が、注意しなくては。2005年に英国原子力公社が「廃炉部門」を民営化し、原子力自体は保持したことをここで反復しようとしている。原発存続前提で、廃炉部門の民営化と東京電力「外」の原子力産業の参入を企図していることがうかがえる。

また別のニュースでは、IAEAが2012年の原子力安全閣僚会議で締結された覚書をもとに、福島県で除染の過程で出る、放射性廃棄物の焼却灰からセシウム除去の協同研究に着手する。一方、IAEAと福井県がさらに協定を締結し、原子力部門の人材育成等に着手するということになっている。

まるで事故を、待ち受けていたかのような迅速さ。今後、先進国の原発は次第に廃炉に向かう。そのことを踏まえての対応なのか。しきりに議論され、時に齟齬をもたらしてきた、放射能汚染食品の安全、がれき焼却うけいれの議論も、こうした全体状況を踏まえない、空疎な机上の「倫理」論では、ほとんど意味を欠く。母親が放射能汚染の対策をになったり、声をあげることの「是否」をただ問うたり、「被災地のへ差別」という一見、倫理的に正しいかのような言い方の前にひるんで思考停止している場合ではない。

もっとも全体状況を踏まえずとも、「放射能は怖い」「被曝は可能なかぎり避けるべし」というシンプルな原理から、汚染食品を避け、がれき焼却に反対している無数の声こそが、真正面からこうした原子力体制を、直感的にきちんと感受している。
未曾有のシビアアクシデントのあとにも、いや、あとだからこそ「利」を得る原子力産業とそのうしろだてになっているIAEAがおそろしい。部分的に使い古された手口で、なおかつ事故でもなお利ざやを得ようとするおぞましい仕組み。一度作ってしまったら、事故だろうと、廃炉だろうと、骨の髄までしゃぶられてしまう。それが原子力。  

そんなもののまえでは、「強情」こそが正しい。「強情」、それでいい。


2013年10月4日金曜日

原子力と女 バーバラ・ジャッジという妖怪 その1

昨年9月に東電内に事故を受けての「原子力改革監視委員会」という組織が設置され、元・米国原子力規制委員会のデール・ワイデンが委員長に、副委員長には英国原子力公社名誉理事のバーバラ・ジャッジという女性が就任した。あまり話題になっていないけれど、再稼働、原発維持のための強力な人選。このふたりの招聘で東電はいったいどれだけの報酬を払ったのかだけでも十分いぶかしい。が、それ以上にバーバラ・ジャッジという女性の言動は看過できない点を多々はらんでいる。去年の秋ごろ海外の反原発運動は、彼女が東電内の役員に就任することでおおさわぎだったのだが、彼女の珍妙でキテレツな姿に目をとられ、かえって油断してしまったのが甘かった。とんでもない要注意人物。



   バーバラ・ジャッジ 英国原子力公社名誉理事。昨年9月からTEPCO・原子力改革監視委員副委員長に就任


バーバラ・ジャッジはもともと米国の金融畑の弁護士。イギリス人と婚姻し、2000年代に入るとイギリスの年金改悪に貢献。さらにかつてサッチャーでもなしえなかった英国原子力公社の事実上の民営化に手を付け、不採算部門の原子力を存続させることに成功。その功績によって、英国原子力公社の理事に就任。さらにインドのジャイタプール原発建設や、中東への原発輸出にも一役買っているらしいことが経歴からうかがえる。

といっても彼女自身、原子力そのものにはまるで縁がない。あくまで金融畑のひと。改革監視委員就任にあたっても「日本のような資源に乏しい国には原子力が必要不可欠」と特段、目新しいことをいっているわけではない。おそらく東電が彼女を招聘したのは、事故にともなう経営危機を軟着陸させることが主な目的に違いなく「東電の経営収支安定のためにまず柏崎刈羽を再稼働させるのが、第一のミッションである」とも語っている。ともかく無慈悲に金をうごかすのにたけた人材、ということだ。また、彼女の経験は新自由主義と原子力産業の交錯点そのものを体現してもいる。


こんな風に、東電原子力監視管理委員会就任にあたって欧米圏で揶揄され、
大騒ぎされているので、最初なんだろう?とおもった。


イギリスでは年金改悪の立役者としても、ひとびとに嫌われている模様。


と同時にもひとつ見逃せないのは、彼女自身が東電改革監視委員会内で語るようにイギリスでの「狂牛病対策」から編み出した、危機管理に際してのソーシャル・コミニュケーションの手法を強調している点。ソーシャル・コミュニュケーションというともっともらしいが、つまり、失墜した原子力に対するひとびとの不信をいかに、なだめ、ごまかしていくかということ。原子力VS日々の暮らし。核VS不安をもつひとびと。その圧倒的に非対称な暴力をおおいかくすための罪つくりな「方便」なのが、みえみえ。
 
彼女の動きに即してみてみよう。

 2013726日には、委員長のデール・ワイデンとともに東電社長も含めて、外国人記者むけに記者会見。ここでワイデンと彼女は、東電のこれまでの対応について多くの記者を前に公然と批判をしてみせる。

 ◆福島第1原発、汚染水流出に専門家委員会から批判噴出 APF通信:83
 http://www.afpbb.com/articles/-/2958809?pid=11090490



バーバラいわく「東電の情報公開性の欠如に本当にがっかりした」「原発の廃炉作業は複雑で難しいプロセスであるため、今後も問題が生じることは必至だろうが、次に問題が起きたときには今回の誤りから学んで人々にいち早く、状況とそれを改善する東電の計画を知らせてもらいたい」。国内報道や反原発をめざす人のあいだでも一瞬、「胸のすく」ような会見ととらえられてしまったことは事実。さらに「海外の専門家」ということで印象操作が与えられ、<無能な東電>VS<原子力に知悉する人>、というさしあたりの構図のもとで、彼女とワイデンがこうした東電内の委員をつとめていること自体の問題性は、見事に後景化してしまった。

2013729日付の「東電原子力改革監視委員会」のwebでは、この会見に先立つ75日に東電ソーシャル・コミュニュケーション室を訪問し、綿密な打ち合わせをおこなっている様子。

(薄気味わるくURLをはりつけることはしません。各自「げんしりょくかいかくかんしいいんかい」と検索してぜひ見てください。一見の価値あり)

さらに気になるのはこの726日の会見を境に海外の「汚染水」報道が堰をきるようにだんだん増えていったこと。とりわけ彼女の本拠地イギリスのBBC放送ではトップ記事、しきりに東電汚染水のニュースが放映されている。
推論するに、東電はこの二人の<周到に用意されたパフォーマンス記者会見>により、いったんは謝罪のポーズをとらされ、そのうえで外堀から「汚染水問題」についてせめたてられ、隠せなくなっていくという、軟着陸路線が逆に可能になったのでは?ということ。おもえば汚染水問題はすでに今年の4月にも、IAEAによって「緊急課題」との指摘をうけている。が、東電自身が言及するのが7月そして選挙終了後から発表、この記者会見を受け、それでも8月中に情報を限りなくこだしに、たらたら発表した結果、日本国内の動揺も断続的になり、人々の関心の持続性もついていけなくなる。そうこうして9月のオリンピック開催発表になだれこめたという推測も可能だ。さらにはイギリスでの彼女の人脈からしてIOC委員会との関連もあるのでは....と邪推してしまう。

東京でのオリンピック開催は、安倍や石原の目先の利益や欲望を超えて、今後、途上国、新興国に原発セールスを展開したい原子力産業からしても「未曾有の危機の克服」という物語つくりにうってつけだ。もはや欧米ではコストにみあわないというのが常識で、「斜陽産業化」しつつある原子力産業が生き残るために、世界の原発立地地図を再編すること。数年かけて、ナオミ・クラインみたいな視点で「災害資本主義」の「核惨事版」が書かれてしかるべきかもと思う。

思えば、チェルノブイリ事故後、電力会社は<ソーシャル・コミュニュケーション>をことさらに重視し、宣伝活動や・情報政策、住民参加型説得に心血を注いだ。女性に親しみやすい電力会社というイメージ戦略のために、キャラクター「でん子」を登用したのはあからさまにもチェルノブイリ事故翌年の1987年のこと。そのころから女性雑誌への広告が格段に増えていく。いまからふりかえるからこそ、みえみえではある。だから、福島級の事後処理、失墜回復のための印象操作となれば、これぐらいのことは平然とやってのけると思っておいて、まちがいはないと思

敵のやることは、安手の芝居じみている。だけど、いや、だからかなのか敵は、思うより手ごわい。

つい長くなってしまった。本題の、バーバラ・ジャッジがソーシャル・コミュニュケーションの対象として、母親たち、女性たちをどのようにみているかについては、以下つづく。

UNSCEAR=国連科学委員会の福島・健康被害予測、まとまらず提出延期。

国連“福島第一原発報告”取りまとめ延期
http://www.news24.jp/articles/2013/10/02/10237378.html
< 2013年10月2日 10:02 >日テレNEWS24
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福島第一原発の事故による放射能の影響に関する報告書を、今月下旬に取りまとめることにしていた国連の委員会が、汚染水の問題などを受けて、取りまとめを延期することがわかった。
 この報告書は、今月下旬に国連で福島第一原発の事故について議論が行われるのに向けて、国連の科学委員会が取りまとめを目指していたもの。関係者によると、報告書の骨子では、事故と直接結びつく健康への影響は「現在も今後もないとみられる」としている。ただ、汚染水による地下水の汚染状況や海洋への影響などについて、「さらに情報収集を進めて書き込むべきだ」という指摘が上がり、月内の取りまとめを断念したという。
 報告書の取りまとめには27か国の研究者の同意が必要で、年内にまとまるかは不透明な情勢。--------
ぬかよろこびしていいのかどうかわからないのですが、きわめて重要なニュースであるにちがいありません。そもそも国連科学委員会報告書の草案自体、今年5月末のウィーンでの事前会議で、ベルギーの代表団(当然原子力推進派)からも、チェルノブイリ事故から何も学んでいない、過小評価もはなはだしいと強い批判を受けていたものです。
発表当時、朝日新聞などの大手マスメディアでは<国民の総被曝量は、チェルノブイリ事故の30分の1>などと見出で強調され、「チェルノブイリ事故より被害は少ない」という印象操作の見込み報道がありましたが、今回の延期を受け報道機関はこれをどのように訂正するというのでしょう。その責任は重大です。
それに今回この報告書がまとまらなかったことについての報道は、今現在、入手できるものは上記のように、ごくわずかなものです。わたしたちの身体をめぐる重要事項であるにもかかわらず、外務省のHPにも、国連日本語HPをみてもどこにもみあたりません。依然として、というより事故2年半をたってますます都合の悪い情報はシャット・ダウンされると思っていたほうがまちがいない。
次第に巧妙になっているようにすら思います。


2013年5月27日・朝日新聞
*「国民全体の甲状腺被曝量」など算出していったい何の意味があるのか。
 
 (大人・子供、性別、身体の違い、原発労働者か、そうでないものか、一切を無視して平板化
 することで安心の共同体、受忍の共同体が作られてしまう。)



参考
・大手新聞が一斉報道するUNSCEAR(国連科学委員会)について調べてみる
http://blog.goo.ne.jp/flyhigh_2012/e/b68b2ee54d0a351b4b38b4bc5be17852
(ちなみに国際的な中立を装っているこの委員会の日本国内対応委員会は
の多くは放射線医学研究所のメンバーで占められているそうです。)

・怒るベルギー代表:「福島原発事故は過小評価されている」
http://vogelgarten.blogspot.jp/2013/08/unscear.html





2013年10月2日水曜日

『国際原子力ロビーの犯罪』(以文社)著者、コリン・コバヤシさん来日


『国際原子力ロビーの犯罪』(以文社)の著者でフランス在住のコリン・コバヤシさん(ジャーナリスト/アーティスト)が10月中旬に来日され、以下日程でシンポジウム、講演などが予定されています。
 この本はチェルノブイリ事故に際しICRP,WHO,UNSCEAR(国連科学委員会)などの国際諸機関、アレヴァをはじめとするEUの原子力推進勢力が、1990年代に「エートスプロジェクト」と称し、被ばく地帯で「住民の自発性」を尊重するという一見聞こえのいい理念のもと、汚染された土地に「主体的」にとどまることを正当化する一方で、いかに「被ばくの受忍実績」を作ったかについてのレポートです。

 


◆以文社『国際原子力ロビーの犯罪』

 このように1990年代、チェルノブイリでの核惨事を契機とした「社会実験」が行われ、「人為的なリスク社会」が存在させられていたことは、いまわたしたちのおかれている状況を「あえて」俯瞰するうえでも、改めて考えてみる必要があると思います。

◆コリン・コバヤシさん・講演予定など
 
10月15(火)16日(水)18:00@東京・日仏会館
http://www.mfj.gr.jp/agenda/2013/10/15/index_ja.php
10.18(金)18:30@名古屋・YMCA
http://tokainet.wordpress.com/2013/09/07/20131018/
10.19(土)14:00@京都・京まちさいりん館
http://www.kankyoshimin.org/modules/join/index.php?content_id=139
10.21(月)18:00@広島・広島平和資料館東館会議室
http://blog.livedoor.jp/sakatakouei/archives/2013-09.html
http://9-hiroshima.org/img/korin.pdf



◆映画「真実はどこに?WHOとIAEA・放射能汚染をめぐって」
コリン・コバヤシさんがかかわり、日本への紹介に尽力されたそうです。
再度の投稿になりますが、未見の方はこの機会に、ぜひ。



ウラディミール・チェルトコフ監督,
エマヌエラ・アンドレオリ,ロマーノ・カヴァッゾニ助監督作品
フェルダ・フィルム、2004年、51分 by Wladimir Tchertkoff