2012年2月16日木曜日

新しい食品基準に対する意見:その1「日本消費者連盟」より

昨年の3月17日、政府はそれまでの食品安全基準を、突如1Kg あたり370ベクレルから500ベクレルにひきあげました。これにはとてもおどろきました。その記憶は、季節がひとめぐりした今でも生々しくよみがえってきます。通常、原子力事故がおきた際には、その基準値をひきさげて、住民の被曝を極力下げるものではないか。。。と。
ところがどっこい、そんなに甘くはなかったのです。今にして思うとこのひきあげについて、ははーんと思うのは、ICRP(国際放射線防護委員会)の定義「緊急被曝状態」期を適応してそれにしたがって、自動的に値をひきあげてみたということなのだな、と。
そして12月16日の野田首相の「冷温停止“状態”宣言」、その直後、22日の内閣の「低線量被ばく管理に関するワーキンググル―プ」の報告書発表。ここにきて同ICRPの「現存被曝状態期」へと、整備。そうした、政治日程ありきのシナリオによるものだったと容易に想像がつきます。
思い出すだに、くやしさがこみあげてくるのは、そうした暫定基準値適応さなかでの農林水産省の「食べて応援しよう」や、消費することがあたかも被災地への支援になるかのうようなさまざまなキャンペーンがはられたことです。

ちょっと考えてみればればわかることですが、通常に考えても、まるで転倒した事態です。安全基準をひきさげ、土壌検査や、食品検査体制も整えたうえで「食べて支援」というなら百歩譲ってもまだ、わからなくもない。でも、事態はまるで逆。原子力災害直後=「緊急被曝状態期」に政府がわたしたちに強いたのは、「風評被害」という言葉によって食べる・食べない、買う・買わない、という日々の営みのただなかに「生産者」と「消費者」、「気にする人」と「気にしない人」などという分断線を即座にひき、放射能被害に対する怒りや、いまだ経験したことのない放射能災害に対するまっとうな恐怖や、東電への補償を求めるあたりまえの声をおさえこみにかかったということなのです。

ところで、この基準の引き上げって誰かの利害を守ったのでしょうか?生産者の利害?食品産業の利害?とてもそうとは思えない。「ともかく今は大変な時期だ。おまえらがまんしろ」というように喧伝し、人々を黙らせ、被災地支援すらを「口実」に利用し、人々に忍従を強いようとした、原子力災害版ショック・ドクトリンだとすら思えます。

主に関東付近で生活している身にとって、日々の買い物、ごはんの支度、また友人との食事の折は、くやしさとかなしさと痛みがつねにさざなみ立っていました。ある人は「私はもう40歳ちかいからだいじょうぶ」といってなんらためらわず配慮もなく、注文してみせたり。気にする人は「エゴイスト」か「不吉」よばわりされ。。。それでもひとついえるのは「汚染されたものは食べたくない」という単なる忌避感情とはまったくちがう、この分断を強いた政府の対応に対する怒りと、生活をばかにするな、生きてくことをなめるなよ、といういままで経験したことのないような感情に促され、食材や産地をえらぶという、祈りにすら似た行為をつづけていた、いるということです。
食品基準についても“暫定”期をすぎ、4月からは新基準が導入されます。けれどもここで安心できるわけはありません。あの消費者と生産者の分断と、再生産の場を軽視した態度がデフォルトなのですから。

(時々おもうのですが、原子力災害の事後対応というのはいくばくかセクシュアルハラスメントの構造に似ていなくもない。「それぐらい気にしない」「過剰・過敏すぎるんじゃないの?」と。性暴力が存在しているにも関わらず、被害にあう可能性の高いグループを個人の「温度差」によって分断していく。「暴力が存在する」と身を以て立証しようとする人々は、時として「わたしがへんなのかな?」というような錯覚においこまれていくところ、など)
実際、暫定基準を改め、数値をひきさげたところで、その不備は多々予想・指摘されています。

(また性差別に酷似した構造であることを悟ってしまった今、このさき被害にあった側に落ち度がある、としてまともにとりあわれないだろうという手口もみぬけるというものです)。

ああ、すっかり前置きがながくなってしまいました。新規制値とそれにともなう諸問題に関して少しづつ批判点がよせられつつあります。「そもそも検査体制がおいつくのか?」「飲食以外による内部被曝とあわせてどう合算するか」、「セシウム134、137以外のストロンチウムなど検出に手間のかかる放射性物質の検出体制をどうするのか?」など。その新基準に対する、意見を紹介しておきます。

・日本消費者連盟 「食品放射能の新基準は再検討すべき」
 http://nishoren.net/consumer_policy/1361

「食品に関しては極力0ベクレルをめざすべき」
「乳児に対する基準の厳格化」
「頻繁に食べる食物に関しての基準の厳格化」

などの意見と提言。厚生労働省宛に提出されたそうです。どうぞ一読を。

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