<放射能に対する被曝恐怖が原因>と発表した」という報道がありました。
◆毎日新聞web2012.3.26より「福島県立医大調査:精神科入院の24%に
被ばく恐怖影響」http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120326k0000m040103000c.html
即座に思い起こしたのはIAEAとWHOによるチェルノブイリ事故の「最終結果報告」について。
事故20年後に原子力関連諸機関と関係国のあいだでまとめられたものです。
以下の文中に要約版が引用されています。
◆「医学のあゆみ23号」「チェルノブイリ事故から甲状腺癌の発症を学ぶ
エビデンス探索20年の歴史を辿る」2009年10.24号・児玉龍彦
http://plusi.info/wp-content/uploads/2011/08/Vol.28.pdf
2枚目に掲載されている「表」。事故20年目のIAEAとWHOの最終的コンセンサス。
これが事故の「公式見解」とされているのです。
(註:まとめは長滝重信氏であることも興味深いですが...)
もっぱらこの「直接的死者50名、影響する死者4000名」についてはきわめて過小評価であると
して欧州放射線リスク委員会なども批判しているのですが、それもさることながら、改めておどろく
のはなにより冒頭から「精神的な障害(subclinical)」が事故のひきおこした「最大の健康被害」
とみなされていることです。
さらに「社会、経済の低下による心理的、精神的打撃」が最も深刻な「被害」であると、
ふたたび「心理」「精神」と繰り返されています。
おそらく、今回の福島大での調査もほかの発症や健康障害を低くみつもり、その代りに
「心理的」「精神的」なおちこみとの比較で操作しようとする意図が働いているのではなかろう
かと?と思われます。
もっとも私自身は事故後の心理的・精神的打撃も十分な「被害」に値すると思っています。
であるからこそ、他の健康被害や発症を、低く見積もる為の比較目的の数値にしてはなら
ないと考えます。
一方で実はこのIEAEとWHO報告、原子力に対する「人々の不安」「恐怖」がもっとも原子力
稼働にとってのやっかいな撹乱的要因であるということを、実は、はっきり認めてしまっている
とも解釈できます。
ところでこうしたIAEAやWHOの不十分な調査に対して、ロシア国内のグループが詳細な
健康調査を行い2009年に 『チェルノブイリ――大惨事が人びとと環境におよぼした影
(Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment)
という一冊にまとめられいるそうです。IAEA,WHOへの「対抗レポート」といえるでしょう。
その翻訳プロジェクトが進行中で近刊予定とのこと。暫定訳も随時WEBで読むことができます。
これから10年後、20年後をむかえるにあたってぜひ念頭におきたいです。
◆「チェルノブイリ被害実態レポート」翻訳プロジェクト。
http://chernobyl25.blogspot.jp/p/blog-page_4027.html
Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment